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月曜日, 10月 11, 2010

サモアのママラという樹から抽出されるプロストラチンのエイズへの薬効、 生物多様性条約 そしてCOP10

テレビを見ていたら、プロストラチンという成分について、報じていた。

エイズに効くらしい。細胞内に入り込んだエイズウィルスを細胞外に排出してくれるらしい。夢の薬だ。


サモアに生えるママラという樹に含まれる。

この樹液は、実際、肝炎などに効用があるようで、先住民の間では薬効のある樹として、伝統的に知られていたものらしい。

テレビではいくつかの組織の関与の仕方を、話題にしていた。

  • 薬効豊かな樹の存在は、先住民の活動に取り入れられていた。そして、先住民はその恩恵を伝統的知恵として民族内に受け継いだ。結果的に種の保存に役立てた。
  • その知恵が、数人の技術者により西洋医学会に伝わった。ママラという樹に含まれるプロストラチンという成分が、エイズにも効くことがあきらかになってきた。
  • アメリカの研究財団であるエイズ研究同盟は、この樹の研究からえられたエイズ薬の利益のうち一定の利益を地元に還元すると約束しているらしい。(政府に12.5%、住民にその半分)
  • スタンフォード大学のコールウェンダー教授が、人工合成に成功。これがこの協定を脅かすことになる。プロストラチンはママラからあまりとれない。が、人工合成により安く大量に生産できるようになった。さらに人工的に機能を強化し、エイズを治せる可能性を指摘している。
  • これにより、サモアは危機感がつのる。ママラの需要がなくなれば、サモアへの利益配分もなくなる。
  • エイズ研究同盟は、利益がでれば配分するとようだが、製薬会社の場合はそうはいかないだろうという。エイズ研究同盟は非営利団体。
  • アメリカの製薬会社が加盟する業界団体全米バイオ産業協会は、生物体の利用には利益配分の制限がかかろうが、人工合成ならば、利益配分の必要はないと主張している。
  • この主張が認められれば、そもそもその樹の大事さを認識し、知恵として伝承してきた住民の歴史的な努力は一切認められない。つまり利益還元がなくなるということだ。
  • もうひとつ踏み込めば、エイズ研究同盟は非営利団体。薬の生産機能も有していないために、その製造はどこかの製薬会社にゆだねられることになる。その時に先に話した利益配分構造が機能するかわからない状態だ。つまり、つねに製薬会社の出方に左右される構造となっている。
  • 利益配分を担保する仕組みは欠陥だらけだ。知恵は先住民、生産する技術は先進国の製薬会社。とした場合の利益配分の問題だ。
  • もっといえば、侵略者としての西洋側の問題は歴史をふりかえってみてもちっともかわらない。黒人問題も、アフリカの問題も、結局は被支配層と支配層の間の対立だ。かつては、保有資源と労働力と土地が論争の種だった。そして、今、伝統的知をどう評価すべきなのかが問われている。
  • この人工合成で製造する薬をめぐっては、先進国と途上国の間でもっともはげしく対立している。

ちなみに、生物多様性条約が1992年に結ばれて、生物資源がもたらす利益をどう配分するか、その国際ルールをつくる議論は平行線のまま18年の歳月がたった。問題提起の時代からからひとつの時代を経ているのだが、進展は遅い。以下の問題がある。


  • 植物を保有する途上国の利益、量産製造して販売する力を持つ先進国の利益の配分の対立は、新薬の開発に歯止めをかける。後になって製薬会社は大きなトラブルに巻き込まれるかもしれないとおそれるからだ。
  • 画期的な薬の存在を心待ちにしている患者が取り残されている。
  • また、結局新薬が開発されないと、そのもとの植物の乱獲が起こり、環境破壊がおこる。
  • そして連鎖関係にある環境の中で、夢の新薬につながる可能性のある植物が重大な危機に直面している。現在年間40000種もの生物が絶滅しているといわれている。


抗がん剤の中にも植物から発見されたものがある。それを発見した先生は、生物多様性を失うことは危険だと警告する。


先住民はその長い歴史ゆえに、自分たちを維持していくための薬効の知恵を様々植物から学んでいる。製薬会社にとっては、どのような薬効があるのかあるいは人間が服用できるのか、その眼先をつけられるので、先住民の知恵を利用できれば、新薬開発=利益への近道になる。薬効が含まれることがわかれば、その成分を抽出してさらに分析を進め、人工合成して量産化する技術とそれを販売する力を製薬会社はもっている。

結局、その知恵の提供者である先住民の伝統は、組織化されていないので人格を持たず、その権益を主張できないというのが製薬会社の理屈だ。だが、実際にはその伝統の中に生きる知恵で先住民は生き延びてきており、その生存権を脅かされるのであれば、あるいはその知恵によって相応の生活を取得できるのであれば、当然生存権や人格権を主張できるものであるし、さらに、知的所有権の立場も主張できるのではないのだろうか?。

これは自然権だと考えるべきではないだろうか?。

双方には利益分配の、当然の理屈と根拠に対して、誠意を尽くす必要があると思う。そうしてくれれば、多くの病人が救われるのだと思う。

このような議論もCOP10の中で、進展を期待したいと思う。

2 コメント :

匿名 さんのコメント...

はじめまして、
エイズ薬
肝炎薬
1日も早く欲しい薬です。
世界中の患者が、サモアへ押し寄せれば・・・
なんとか打開の道が開けますように!

株税金 on 3:22 午後 さんのコメント...

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。