Pages

日曜日, 11月 23, 2008

アレルギーと現代人

テレビで報道していた内容だ。

花粉症の発症の過程は以下のようなものらしい。
原因はIgEという免疫細胞。
Igeが少なければ、発症しないが、なんども花粉をあびると一触即発の状態になる。
ある段階で、IgEのスイッチがはいり鼻や目の粘膜でマスト細胞が爆発する。
マスト細胞は炎症物質を大量に放出する。
この炎症物質が神経を刺激して、くしゃみ、鼻水、目のかゆみを引き起こす。
無害な花粉を体外に排出しようとIGEを大量に作り出そうとする過剰な免疫反応。

花粉症は発見から42年で国民病となった。

Igeは家にいるダニの糞や死骸などに対しても作られる。気管支で炎症がおこるとアレルギー性ぜんそく、鼻の粘膜でおこるとアレルギー性鼻炎を引き起こす。


だが、アレルギー反応は先祖を支えてきたという現実があるという。

今から2億年前に、哺乳類が誕生した。
初期の哺乳類は、大型の動物の餌食となりやすかったが、その他の敵もいた。
体内に侵入する細菌やウィルス、皮膚にとりつく吸血ダニ、内臓に入り込む寄生虫などの敵がいた。
細菌やウィルスに対しては、哺乳類になる前からもっていた細菌型免疫で対抗していた。
この免疫は細菌よりはるかに大きい吸血ダニや寄生虫に対しては効かない。
吸血ダニは、皮膚に食いついて、体が血液で満たされるまで1週間にわたって吸い続ける。
強力な病原体を媒介し、大型の哺乳類さえもしに至らしめることがある。
皮膚の柔らかい哺乳類は常に襲われていたと考えられている。

哺乳類は、新しい免疫を獲得していた。IgE免疫だ。吸血ダニを撃退するにはIgEが必要だ。
吸血ダニは皮膚と溶かすための酵素を出す。
すると免疫細胞が吸血ダニの酵素に対するIgEを作る。
再び吸血ダニが食いつき酵素がはいってくると、マスト細胞の表面にある起爆装置IgEが酵素を捕まえる。
するとマスト細胞は炎症物質を皮膚の中に放出。
吸血ダニは血液といっしょに炎症物質を吸い込む。
吸血ダニは嫌がって逃げたりショック死したりする。
吸血ダニだけでなく、このIgEによるアレルギー反応は様々な生物を撃退するのにも有効。

現在、吸血ダニや寄生虫がいなくなった現在、その攻撃の矛先を体にとって無害な花粉に向けるようになって私たちを苦しめる。

花粉の成分が吸血ダニの持っている成分に似ている。そのために、体に花粉が侵入すると勘違いしてIGEが反応している。

なぜいまそれがふえたのか、戦後杉を植林したために花粉が増えたり、過程に冷暖房やじゅうたんが普及してダニが増えたからだ。だがそれだけが原因ではない。世代間で異なる現実が浮かび上がっている。

アレルギー体質とは、スギ花粉やダニなどに対するIGEを多く持っている人。

5年前に都内に勤務する350人を調査したところ、昭和30年代以降に生まれた人の発症率は、70%以上。それ以前は40%以下という結果がでた。という世代間の差がでた。アレルギーには遺伝的要因もある。だが、この事実は、それ以外の原因が関与しているところがある。

農家の子供とそれ以外の子供を分けて調査すると
       農家    農家以外
花粉症   3%       10%
ぜんそく  1%        4%
と農家の子には少ない結果をえた調査がある。だが、農家でなくても発生しないケースを見てみると、農家に遊びにいっていく習慣をもっていたということだった。


家畜と触れ合うことにアレルギーに対する予防力を身についてられる。


乳児期に室内で犬や猫を2匹以上飼っているとアレルギーになりにくいという事実がある。 逆にペットの毛やふけが花粉と同様にアレルギーを引き起こすこともあり、一概に良いともいえないらしい。

生活環境を調査。部屋の埃を調べた。アレルギーでない子のベッドからエンドトキシンと呼ばれる成分が多く見つかった。大腸菌などの細菌を覆う膜の成分。細菌が死んでばらばらに出ると大量にでる。

エンドトキシンが少ないベッドに寝ている子の花粉症発症率は15%、多いと2%。エンドトキシンの主な発生源は家畜の糞だ。家畜小屋に入った子供はエンドトキシンを吸い込み、衣服につけて家の中まで運ぶ。

アレルギーがきわめて少ないモンゴルの遊牧民を観察すると、家畜は子供たちの遊び相手であるだけでなく、エネルギーとなる糞を子供たちがあつめる習慣がある。

       モンゴル 日本  
花粉症   6%   30%
アレルギー 1%   5%

免疫を正常に保ち、アレルギーを防いできたもの。だが、高濃度のエンドトキシンを浴びて、もし血液にはいると高熱がおき、ショック症状がおきることがあるもいう。

もうひとつ年齢が関与するということだ。
1歳までの生活環境に左右される。
オーストリアの農家に生まれた赤ちゃんは生後すぐからエンドトキシンに左右される。
1歳までに家畜小屋に出入りしていた子供は
花粉症1/4、ぜんそく1/2であった。


以上のことをこう解説していた。
人は、生まれた直後から、細菌や吸血ダニとであうことで免疫をいちから作り上げるように進化してきた。
赤ちゃんにはまだ役割の決まっていない未熟な免疫細胞が無数にある。
生まれた直後、細菌が入ってくると、未熟な免疫細胞は細菌を攻撃する型にかわっていく。
人類が哺乳類になる前から持っていた細菌型の免疫細胞だ。一方吸血ダニや寄生虫にに襲われれば、未熟な免疫細胞は哺乳類が新しく獲得したIgE型免疫に変わっていく。
現実には、乳幼児期に2種類の免疫細胞は体内でせめぎ合う。
このバランスがアレルギーになりやすいか一生にわたる体質を決めると考えられている。
生まれた直後からエンドトキシンに触れると、細菌にふれたのと同じ効果がある。
細菌型免疫細胞が増えるので、アレルギーになりにくい。
一方現代の日本のように細菌やエンドトキシンが少なく、花粉が多い環境に置かれると、免疫細胞は、吸血ダニや寄生虫が多い環境と誤解して、Igeを作る型に偏ってアレルギーになりやすくなる。

乳幼児期の環境は将来アレルギー体質になるかどうかを決める。

日本においては昭和20年代までは農村に暮らす人が7割を超え、家畜との共生だった。
昭和30年代に入ると、都市化が進み、家畜のいない環境で暮らす人が増えていった。
家庭内の衛生環境も変わり、電気洗濯機、掃除機、冷蔵庫が普及した。
衛生環境の激変が、それまで保たれていた免疫のバランスを崩し、アレルギーの急増を招いた。

人間環境があまりに変化して、人間の免疫環境がおいつけない。

衛生状態が良くなったために、感染症が減り、乳幼児の死亡率は劇的に下がったという現実もある。
清潔さを求めた事実も正しい。

アレルギーは今でも謎が多い。

兄弟の数や生まれた順番によってもアレルギーや花粉症になることに違いも出る。
調査報告によると、後で生まれた子供のほうが少ない傾向だ。
上の子供が外から持ち込むエンドトキシンを早めに体に受け入れるためにその抵抗力がつくというものらしい。
兄や姉が4人以上いると花粉症にかかる確率が低い。


二〇〇〇〇〇〇〇〇年前、最初の免疫を獲得した。
文明が急速に発達した、超清潔社会。戦くべき敵を失ったために、自らに牙をむくという思わぬ事態になったと番組は結んでいた。

0 コメント :