とても幸せな時間だ。でも、一方で深く傷つけあう時もある。
テレビで、男女の心の関係について、科学的な見地でまとめた番組を報じていた。
簡単にその要旨を記録しておこう。
番組のアプローチは、恋をしている人たちの脳の反応の調査結果と、人類の進化過程における子育ての経緯を関連付けることによって説明しようとしていた。
まず、脳の反応という現象をとらえると、以下の状態がある。
- 男女で共通で活発になっている部分がある。その部分はドーパミンという物質を作って、体に快感を与えるという。
- 男女で共通に不活発となっている部分もある。これにより分析などの行為が抑えられているという。
- そして男女で異なる反応をしている部分がある。男性の場合、視角が活発となり、女性の場合記憶が活発となる。おもに男性は女性の腰のくびれを見るようになり、女性は男性が言った言葉が正しく実行されたかどうかを見るようになるのではないかと仮説をたてている。男性がくびれを見るのは子供を生んでくれるかという視点にたっているといい、女性が記憶を重視するのは子育てのために必要な正しい情報を与えてくれるかということだ。
人間は400万年前に2足歩行をするようになったが、そのために発達した骨盤はある大きさ以上には大きくなれない。このことは、人類が子供を授かる時に、ある程度未熟状態で生の誕生を受け入れなければならないこととなる。当時の女性は、子供をある程度自立させられるようになるまでつきっきりで育てなければならないので、守ってくれる伴侶を必要とする。おおむね3歳くらいになると子供もあまり手がかからなくなる。そうすると、伴侶の存在価値が減っていく。子育てこそが恋愛システムを進化させたのだという。
これらの事象から、おおむね3-4年くらい付き合うと男女間で一緒にいる意味がなくなってくるという心の動きのサイクルができたのだという。番組での説明の言葉の中には狩猟民族という言葉がしばしば聞かれた。
離婚にいたる男女関係について、さらに説明が加えられた。
女性は子供を育てる過程で、つきっきりになるケースが多く、そのために同様の境遇の女性と群れをなし、様々なコミュニケーションをすることによって生と育児を担保する生活習慣を身につけていく。そのような歴史的な過程を取り込み、共存的な本能を持つ。一方男は、狩猟を行い過程で、襲撃に対する警戒心と競争にさいなまれながら生きていくため、危険を察知してそれへの対応を迅速にとれるように、問題解決型の思考をとる。
この思考の差異が、3-4年たった後の男女関係に影響するのではないかとの仮説を説く先生の話が紹介された。
ある実験が披露された。
情報技術者の男性と弁護士の女性という夫婦。実験は、15分間の会話を行い、その間心拍数とビデオをとるというものだ。
妻のクレジットカードの使い方に関する会話だ。始まったとたんに、もう尋常な会話ではない。まるごしのけんかだ。
報じられたビデオは概ね以下のような内容。
夫が、妻のクレジットカードの使い方に関して非難する。先月高額な請求書を受け取ったのだ。妻はそれに防御的になって、必要なものの購入が集中しただけだと応酬する。夫は、一般的な正当論に照らし合わせて、妻の行動の是正を求める。妻には、見下したように受け止められる。男性が金銭の支配感を振り回しているように非難する。こうなると反論の応酬だ。見るに堪えない、というか見ていてハラハラする。そして、やがて男性側から、もうこれで実験は終えようという合図が出される。
おそらく、最初に夫が妻を非難する言い方ではなく、高額のクレジットカードの請求を受けることが不安だという形で告げれば、妻は異なった対応をしただろうと番組は言っている。
番組ではビデオのこの惨状を、アメリカも日本も一緒だと説明する。そして、もう一つの事実を報じる。男性の心拍数は、この会話の過程で上昇するのに対して、女性の心拍数はほとんど変わらないという事実だ。男性が実験を終えようという合図を送ったのは心拍数100を超えたあたりだ。様々な事象に対して、男性の心拍数は上がりやすく下がりにくいのに対して、女性のそれは一定に保ちやすいということが現実として報告されているらしい。
ここでも、人類の進化に根拠を求めている。先に述べたように、女性は子供を産んだ後の3年ほどの間子供に付き添うために、同様の女性やあるいは事情を理解する女性と群れをなして生活する。だから、コミュニケーションによる結びつきが強い。また、一定の事象に対して安定を保とうとするので心拍の乱れが少ない。一方男は、狩猟の中で常に、敵味方を判断する必要があり、また事に応じてすぐに戦闘態勢に入れるように興奮状態に持っていく修正がある。先の実験で男性が実験を終えようと切り出した時の心拍数が100を超えていた状況は、戦闘態勢に入る心拍数だという。
現在の夫婦の在り方は、生涯を供にする伴侶という生活スタイルであり、遠い昔に人類が身につけた習慣から変化している点をあげ、男性にコミュニケーションの能力を鍛える努力を試みる必要があるのではないかと言っている。先の実験の夫婦にコミュニケーションを試みさせるが、なかなかうまくはいれない。コンサルがそばにいて誘導する。いくつかの印象深い会話がある。
夫「両親がけんかした時にどう思ったか?」
妻「とても怖かった。・・・・」
そして、最後に聞いてみるべきことがあると締めくくった。それは、夢。何を達成したいかだ?
夫「よき夫であり、よき父であり、そして良き市民として人々の記憶に残ることだ」
妻「ロッキングチェアーにすわって、・・・」
不思議なことに、ともに追い求めているのは良き家庭像であり、おだやかな状態だ。
円満なほうが、健康を維持できるような気がする。
だが、価値観の差異が根本的にある男女関係は相補いあう部分がある。お互いが生物学的に必要な状態を抜けた後に、さらに伴侶としてよき人生を送るには、お互いの理解への努力が必要なのだろう。
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